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冷たくて温かい、


 雨が振り続けぬかるんだ地面に、俺は何度も転びそうになる。
 街中のビル達はいつも通りの顔で俺を見下ろす。
 森の中を駆け下りたせいでついた泥が気持ち悪い。
 正直な話、俺は早く家に帰りたい。こんな雨の中を上着も羽織らず走り回るのは御免だ。
 しかし、なかなかそいつは見つからない。上手く逃げすぎだぜ。
 クソッ垂れだ。
 思い返すと、俺はそいつに振り回されっぱなしだ。
 あの日から。
 あいつに出会った日から。色々、本当に色々な道を踏み外したような気がする。
 それに加えてだ。
 今まさにそいつは俺の踏み越えちゃいけないラインを、またもや超えさせようとする。
――いや。クソッ垂れは俺だ。
 誰かのせいじゃなくて、俺は自分で道を決めるべきだし。
 今までもそうしてきたはずだ。
 誰かのせいではなく、これは俺が選んだ道だ。
 そうだぜニッキー。
 そろそろ良いんじゃないか。胸糞悪い話だが、俺はそいつが嫌いじゃない。

 そして、俺はそいつに追いついた。
 途中で買った傘を、そいつに向かって放り投げる。
 距離は十メートルってところだ。
 そいつは放物線を描く傘を器用に受け取り、差さずに地面に置いた。
 せっかく買ったのに。使わないのかよ。
 付き合う義理などないけど、俺も傘を地面に放った。
 雨は振り続け俺の肩を打つ。
 まあいいさ。
 言ってやろう。俺の気持ちって奴をさ。

 愛の告白だ。

 紫に煙る灰色のビル群に紛れて、そいつはぽつんと立っていた。


 
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